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読解問題には、読み方・解き方がある!
なんとなく読み、なんとなく解くことをやめて、論理的な解法を習得してください。

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読むことについて 2

 講師の八柳です。

 読むこと、についてお話しします。

 

 ある文章を、とりあえず「読めている」というのは、読みながら、

 

 ①いまなんの話をしているのかはっきりわかっている。

 ②つぎなんの話がきそうなのか、ほんのり予感できている。

 ③その「予感」が外れたとき、「ああ、そういう話だったのね」とすばやく自分の思い込みを修正していける。

 

 ということです。読解力を高める、というのは、つまりこの三つのちからを高めるということなんです。

 

 では、どうすればいいのでしょう。逆に、この①から③ができなくなってしまうのはなぜなのかを考えてみましょう。

 

 ①、そもそもげんに読んでいる一文の意味すらよくつかめないときは、まず語彙力の不足が疑われます。説明文なら「主観」「客観」などの概念語、物語文なら感情をあらわす慣用句など。

 

 語彙集を用意しましょう。一日に何ページと決めて、覚えていきましょう。

 

 そして、これが大切なのですが、覚えた語彙は、じっさいに使ってみましょう。

 

 例文をたくさんつくりましょう。

 

 ふだん使わないようなことばでも、意識して会話に織り交ぜてみましょう。

 

「その使いかたはおかしい」「ちょっと不自然」などと、すぐに指摘してもらえる環境で使うのが理想です。

 

 教室に通ってくださっているかたは、ぜひ、わたしに例文を見せたり、話しかけたりしてください。

 

 ことばの意味というものは、思っていたよりも柔軟で、「ぶれ」を許容するものなんです。

 辞書や語彙集の定義を丸ごと覚え込んでも、その「ぶれ」をとらえられるようにはなかなかなりません。生きた用例にたくさんふれながら、からだになじませていきましょう。

 頭で覚えただけのことばは、いざというときなんにも語りかけてはくれません。

 

 

 ②、このちからを向上させる方法は、ふたつあります。

 

 ひとつ、話題についての背景知識を増やすこと。

 

 大学受験であっても高校受験であっても、中学受験であってもそうですが、試験で出題されるような説明的文章のテーマというのは、ある程度決まっています。数多くの文章を読みなれておけば、「ああ、またあの話ね」となる機会は、とうぜん増えるわけです。

 

 わたしは文学や思想系の話題をあつかった、標準的な分量の新書などであれば、だいたい十分から十五分くらいもあれば一冊読めてしまうのですが、それはじぶんがその分野についてよく勉強してきているので、ひとつひとつのことばにほとんど肉体的な実感がともなっているばかりか、「つぎなんの話がきそうなのか」という、この予測能力がけっこう正確にはたらくからなのです。

 

 ざーっとページに目を走らせながら、「これは知らないなあ」とか「えっ、そっちの方向にいくの?」とか思ったときにだけ、読むスピードを落とします。

 樋口一葉のような眼球運動の天才でないかぎり、読むのが異様に速いひとはだいたいこのように、既存の知識に頼っているのだと思われます。

 

 ただこのやりかた、つまり背景知識の拡充によって未知の領域を少なくしていこうというやりかたは、読解という分野においてはあくまで補助とお考えください。

 知識だのみの読みかたをしていると、ほんとうにまったく未知のことがらについての文章を読むはめになったとき、うまく対応することができなくなってしまいます。

 また、これは③でもふれますが、この種の読みかたには危険もともないます。

 

 では、どうすればよいのでしょうか。ここで、ふたつ目の方法です。

 

 接続詞に習熟すること。

 

 これはどの参考書にもおそらく書いてある、説明的文章読解の基本中の基本だとおもいます。読むときに、とにかく、「だから・しかし・ところで・いっぽう・ただし・なぜなら」……こういった、文と文とをつなぐことば、「接続詞」に注目してください。

 

 接続詞は、順接、逆接、対比、転換、補足、説明と、「論理関係」を示すはたらきをします。読者は、この接続詞に着目しながら読むことで、つぎの一文にむけた心がまえをすることができるのです。

 

 たとえば、「傘をもって外にでた」という文があったとして、そのあとに、「しかし……」とつづいていれば、「雨は降らなかったのかな」などとなんとなく予想がつきますし、「だから……」と書いてあれば、「濡れずにすんだのかな」とこれもやはり予測がはたらきやすくなるわけです。

 

 この種のことばのありがたみをつくづく実感したければ、接続詞や接続助詞をいっさい使わず、あなたの主張をのべる文章を書いてみてください。

 それはきっと、ある種のおもしろみをもったものにはしあがるでしょう。

 けれども、けっして読みやすいものではないにちがいありません。

 

 

 ③、これはむずかしい問題なんですよ。②ですこし言及しましたが、いろんな知識をもっていたり、考えることの得意だったりする生徒さんほど、ここで罠にはまってしまうことが多いんですね。

 

 要するに、思い込みで読んでしまうんです。それが思い込みだと気づけないまま、一気呵成に記述答案を書きあげてしまいます。まぎらわしい選択肢にひっかかってしまいます。

 

 読書好きなのに、いまいち国語の成績が伸び悩んでいる生徒さんがたの問題も、多くの場合はここにあります。すらすら読むことはできるのですが、あるいはできてしまうがゆえに、緻密に読むことに慣れていないのです。

 

 こういうかたは、ぜひ、教室に来てください。答案そのものを拝見するだけでなく、その回答へといたった理路について、お話を聴かせてください。

 いっしょに、「思い込み」の根源を発見していきましょう。やがてあなたなりの、読みかたのくせのようなものがあきらかになっていくでしょう。

 それを客観的にとらえることで、はじめて、読んでいる最中に「あっ、いま思い込みで読んでいるかもしれない」と気がつけるようになっていくんです。

 

 しかし……これは場合によってはほんとうにむずかしい問題です。

 

「思い込みの世界にとどまりたい」という、つよい誘惑がはたらく場合もあるとおもいます。それが不安や恐怖、焦りのかたちをとってくることも多いでしょう。

 

 しかしとにかく、ていねいに、しなやかに、虚心に目の前の一文を読み解いていくことを徹底しましょう。

 あせらないこと。がっつかないこと。これがなにより肝心です。



投稿者: フィロソフィア国語教室投稿日時: 2024年10月4日 13時55分