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読解問題には、読み方・解き方がある!
なんとなく読み、なんとなく解くことをやめて、論理的な解法を習得してください。

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上手に書くためのコツを学びましょう!

苦手な方歓迎!古文・漢文が、最短時間で、正しく読めるようになるために。文法の知識と読み方とを丁寧に解説します。

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古文の学習について

 講師の八柳です。

 

 古文や漢文は不人気科目の筆頭です。

 

 生徒さんがたにお話をうかがうと、将来なんの役に立つのかわからないのでやる気も湧かないとおっしゃいます。

 しかし役に立つとはどういうことでしょう。

 税理士の資格だとか、プログラミング技術のように、むこう数十年にわたって確たる食い扶持をもたらしてくれるということでしょうか。

 そういう意味でしたら、たしかに役には立ちにくいでしょう。

 けれどもし、なんらかのかたちで日本語の文章を書く機会をもつようでしたら、勉強してみて損はないとおもいますよ。

 たとえば、以下のような文章についてあなたはどのような印象を抱きますか。

 

「私たちは、ディスラプティブなテクノロジーとトランスフォーメーシャルなビジョンを駆使し、サステナビリティとソーシャルインパクトの融合を追求します」

 

「先進的なアイデアを創出し、アジャイルなアプローチで市場のニーズに迅速に応えることで、サステナブルな成長を実現します」

 

「チームメンバーの多様性を尊重し、各人のポテンシャルを最大限に引き出すことで、コラボレーティブなカルチャーをクリエイトします」

 

 これは創作ですから極端な例ですが、むかし、わたしの勤めていたインフォメーションテクノロジー企業内でも似たようなことば遣いは跋扈していました。

 

 おなじ内容をわれわれの母語で言いあらわすとどうなるでしょう。

 漢語と和語と、それぞれ用いて表現しなおしてみると、どうなるでしょう。書き換えられますか。

 

 

 古文、漢文を習得するにあたっておすすめの勉強法、それは、音読です。

 とにかく音読してください。

 江戸時代の人びとは、「素読」といって、子どものころからわけもわからないままに、孟子や論語、孝経などといった漢籍を、とにかく教師のまねをして、耳で聴き、声にだし、身体で覚えこみました。

 そうして漢文の「感覚」を身につけたのです。これは、いかなる異言語においても有効な学習法だとわたしはおもいます。

 

 わたしは時折語学狂になる時期があって、古典ギリシア語、ラテン語、サンスクリット語、パーリ語とやってきたのですが、どの言語を学ぶときでも、文法書を一冊終わらせたあとは、音読、音読、音読ばかりでした。

 

 ただそれはやみくもに、デタラメに声にだして読めばいいというわけでもないのです。

 できれば以下の手順を意識して、取り組んでみてください。

 

 まったくの初学者のかたを想定してお話しします。

 

 古文の場合でしたら、まず、「用言の活用」を覚えなければなりません。

 

 用言ってなんでしょう。それは、動詞、形容詞、形容動詞のことです。動詞は九種類、形容詞は二種類(補助活用もいれると四種類)、形容動詞も二種類に活用しますね。このパターンをすべて覚えましょう。

 

 未然形から命令形まで、全種類の活用においてすらすら、一瞬の迷いもなく唱えられるようになるまであの表を頭に叩きこみましょう。

 

 寝ごとで「a・i・u・u・e・e……」とつぶやきはじめるくらい、友だちが「ウケるー!」と言ったら「下二段活用!」と頭をよぎるくらいです。

 

 黙って目で見て覚えようとしてはいけません。できるだけ声にだして読みましょう。

 耳でも覚えましょう。

 読んでいるじぶんの声が、いざというときしぜんとよみがえってくるようにしてしまいましょう。

 

 ことばの勉強は、最初がかんじんです。いったん読めるようになってしまえば、それほど苦でもなくなります。しかし、読めるまでがキツいのです。

 この段階に、ひと月も、ふた月もかけていてはいけません。毎日コツコツ、少しずつやっていけばいいかな、などと考えてはいけません。挫折するからです。どこかでめんどうになってしまうからです。

 

 計画を立てましょう。

 

 三週間、やりかたによっては二週間でもかまいません。そのごくかぎられた期間だけ、他科目についやしている勉強時間のうち、喫緊の必要があるぶん以外はすべて、古文の勉強に充ててください。

 最初の一週間で、用言の活用を完璧に覚え込みましょう。

 このようなスケジュールはどうでしょう。

 

 一日目:動詞

 二日目:動詞の復習と形容詞

 三日目:形容詞の復習と形容動詞

 四日目:形容動詞の復習と動詞の再復習

 五日目:動詞の再々復習と形容詞の再復習

 六日目:形容詞の再々復習と形容動詞の再復習

 七日目:形容動詞の再々復習、総まとめ

 

 第一目標は活用表をつまずかず、ひと通り唱えられるようになること。それを白紙に書けるようになること。

 

 第二目標は、かんたんな短文のなかで指定の単語を適切なかたちに活用させられるようになること。なぜその活用形にせねばならないのか説明できるようになることです(たとえば「花咲け時」という文を見て瞬時に「あっ、体言が後に来ているから連体形にしなきゃ!」と判断し、「花咲く時」に直せるようになる、など)。

 

 そこまでできるようになったらまずはいいでしょう。教室に通ってくださっているかたは、ぜひここまでに得た知見をわたしに講義してください。

 アウトプットは、もっとも効果的な勉強法のひとつです。

 わたしは拝聴し、なにかまちがいがあるようなら訂正いたします。

 

 そこを乗りきれたらつぎの一週間で基本的な助動詞の意味と活用の種類、接続まで覚えましょう。以下のような計画はどうでしょう。

 

 一日目:完了(つ・ぬ・たり・り)

 二日目:前日の復習、過去(き・けり・けむ)

 三日目:完了と過去の復習、推量(む・むず・べし・じ・まじ)

 四日目:前日の復習、推量・推定(らむ・めり・らし・なり)

 五日目:推量・推定の復習、断定・願望・反実仮想など(なり、まし、たし、まほし)

 六日目:前日の復習、総復習①

 七日目:総復習②

 

 助動詞の場合、「接続」というのが厄介なんですね。

 何の助動詞は用言の何形の後にくる、というルールが決まっているのです。たとえば、助動詞「ぬ」は連用形接続である、「べし」は終止形接続である(ただしラ変型動詞につくときは連体形接続となる)など……。

 

 これは理屈だけ覚えてもじっさいに読むときには役に立ちませんから、問題を解きながら理解してもらったほうがいいでしょう。

 

 たとえば、「(思ひ)む子を法師に(なす)(たり)むは……」()内の語を適切な形に活用させてください、というような問題に、とくに「総復習」の日には、できるだけたくさん取り組んでもらうのがよいと思います。

 

 

 以上、古文の学びはじめの時期におすすめのふたつの学習計画を提示いたしましたが、おわかりいただけるであろう通り、わたしが、とにかくなによりも意識してほしいのは復習、とにかく復習が重要だということなんです。

 

 フォトグラフィックメモリーのような、特殊な能力をおもちの方であればいざ知らず、ふつう、人間は当然いろいろなことを忘れていきます。

 

 忘れることを前提に、計画を立てていかなければいけません。

 

 問題に取り組むさい、冊子に直接書きこむのでなく、かならず、ノートに解くようにしてください。まちがえてしまった問題、正答していても理路のあやふやな問題には、なにかしるしをつけるようにしてください。

 そして翌日の学習は、しるしつきの問題を解きなおすことからはじめてください。

 なぜ、そのような答えになるのか、きちんと納得のいくかたちで、誤魔化しなく、自分自身に説明できるようになっていることをたしかめてください。

 

 ノートは、これはひとの好みにもよるのでしょうが、あまりきれいにつくりすぎないほうがいいと思います。

 情報を整理し、あとで見返すだけならば参考書でじゅうぶんです。

 いちどていねいに見栄えのよい紙面をつくる間に、十ぺんでも百ぺんでも音読したほうが、暗記のためにはぜったいに効果的です。

 ノートは基本的に、よごすものだと考えてください。

 わたしのおすすめは、「セルフ講義法」です。

 ノートの一ページをホワイトボードに見立てて、そこに例えば助動詞なら「完了」とか「過去」とか、なんでもいいのですがテーマを立てて、思いうかぶ情報をがーっと書きなぐっていく。

「つ、ぬ、たり、り、き、けり……」など。

 

 書きなぐりながら、べつにじっさいに声はださなくてもいいのですが、自分自身に対し、でてきた情報について解説をおこなってみる。

 

「つ、ぬ、たりは連用形接続だけれど、りの接続はちょっと変わっていて、『サ未四已』と語呂合わせで覚えるのがよく……」

 

「き、は直接過去、けり、は間接過去で……詠嘆の意味もあって……」

 

 するとこの不意にでてきた「詠嘆」ということばから、和歌のことへと連想がひろがっていったりするわけです。

 

「和歌……和歌……ええと……枕詞なんてのもあったな……なんだっけな……」

 

 と言いよどんでしまったら、その分野については知識が欠落しているということ。そうしたらそこを参考書で重点的に学んだり、あるいは、教室でわたしに尋ねてくれたりすればよいのです。

 

 

 話がやや逸れてしまいましたが、最初のきついひと月ほどで集中的に文法の基礎を叩きこんでしまったら、そこからは、じっさいに易しい短文を読みながら、古文というものに慣れていきます。

 

 慣れ、これも大切です。われわれの親しんでいる現代的な文章と、いわゆる古文とでなにがちがうかといいますと、それは明晰さというものにたいするとらえかたなんです。

 

 多くの古文は、とくに源氏物語や枕草子をはじめとする王朝文学や、その文体をまねぼうとした室町時代の物語文学などに顕著な傾向ですが、はなはだぼんやりしています。

 

 順接なのか、逆接なのか。主語はだれなのか。なんの話をしているのか。省略や、仄めかしがあまりに多く、たんに単語や文法の知識を万全にしただけでは、この戸惑いからぬけ切ることはできません。

 

 文脈を読みわけるちからを養わねばならないのです。そのためには、一般的に考えて、あるていどの時間を要します。

 

 教室では、生徒さんがたに、一文ずつ、逐語的に訳してもらうやりかたをとっています。

 

 なぜ逐語訳(文章のなめらかさはいったん度外視して、一語ずつをとにかく正確に訳していく方法)をとるかというと、これは、ある種の罠に陥らないようにするためです。

 

 といいますのも、現代文の得意な生徒さんですと、あるていど、「フィーリング」で読めてしまうかた、「なんとなく」の内容なら把握できてしまうかたがいらっしゃるんです。

 

 しかし、いざ設問を解きにかかると、そこで読解の求められているのは正確な文法知識なしには手も足もでない部分であることがひじょうに多いのです。

 

 たとえば、

 

「今はこの世のことを思ひたまへねば」

 

 この「たまふ」が、なんとなく敬語っぽいな、尊敬語っぽいな、というところまでは推測がきく方も多いでしょう。しかしそれはまちがいなのです。「たまふ」には二種類あって、これは謙譲語の「たまふ」、下二段活用のほうの「たまふ」なのです。

 

 それが見わけられないと、たとえば、「尊敬語っていうことは、主語はえらい人なのかな……」などと、「一見読めているっぽい誤読」のほうへと向かってしまうのです。

 

 これはあくまで一例ですが、このような事態をさけるために、塾では逐語訳をおねがいしています。

 

 わたしが一文一文、その生徒さんの進度や必要に応じた解説をいたしますので、どうか生徒さんにおかれましては、あまさずメモをお取りください。

 たくさんプリントに書き込みをしてください。

 あいまいな点はなんでも質問してください。

 

 そして、家に帰ったらその文章をひたすら音読してください。

 

 音読しながら、意味がしぜんと頭に再生されることをおたしかめください。もし、「ここどういう意味だっけ?」というところがあれば、ためらわず、後日わたしにお尋ねください(あるいは、ご自分でお調べいただいてもけっこうです)。

 

 その日だけでなく、翌日からも、十分、十五分ていどでかまいませんから、かならず毎日、音読の時間をつくってください。

 

 おなじもの(前回の授業のプリント)を、何度も何度も音読してください。

 

 できるだけ高速で読んでみたり、情感を込めて読んでみたり、いろいろな読みかたを試してみてください。

 

 毎日、かならず毎日です。でなければ効果はでてきません。

 どんなに忙しくても、疲れていても、どんなに短時間でもかまいませんから、かならず、毎日つづけてください。

 ひと月くらいもつづければ、古文をそれほど苦もなく読めていることに気がつくはずです。単語帳を開いたり、敬語の種類を整理したりしはじめるのは、それからです。

 



投稿者: フィロソフィア国語教室投稿日時: 2024年9月27日 13時57分