読解問題には、読み方・解き方がある!
なんとなく読み、なんとなく解くことをやめて、論理的な解法を習得してください。
わかりやすい文章の書き方を知っていますか?
作文と小論文の違いがわかりますか?
上手に書くためのコツを学びましょう!
苦手な方歓迎!古文・漢文が、最短時間で、正しく読めるようになるために。文法の知識と読み方とを丁寧に解説します。
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講師の八柳です。
わたしは朝おきるとまずカーテンを開けゆっくりバナナを咀嚼しながら、ブライトライトMEという、一万ルクスの光をはなつ四角い器具の前で十五分間、正座します。
どんなに急いでいてもきっちり十五分、もそもそ口を動かしつづけます。
これはバナナに豊富にふくまれているトリプトファンという栄養素を、光によって、しあわせの物質セロトニンへと変えるためです。
セロトニンは、精神の安定をもたらします。
遅刻をしてもまあいいかという気分になることができます。
ですから、万一寝坊をしたとしても、この儀式だけはぜったいにかかしません。
つぎに、カフェインを摂取しながら文章を書きます。
中身はなんでもかまいません。
飽きるまで、つかれるまで、あるいは、なにかまとまったものがしあがるまで、とにかく文字を打ちつづけます。
毎日だいたい、原稿用紙換算で十枚ぶんくらい書くことが多いです。
小説の体をなしかけるものもありますし、シュルレアリスムもどきの奇天烈駄文に終わることもあります。
消してしまうものがほとんどです。
ひとさまにお目にかけるためでなく、ごく私的な精神健康法としておこなっているだけのことですから、それでいいのです。
それから瞑想に移ります。
一時間ほどすわります。
白い、満開の光の花や、海外の大瀑布のような光景がみえてくることもあります。
それがすんだら各種外国語の音読、そして、有酸素運動を三十分。
ここまでで、だいたい十一時くらいになっていることが多いです。昼食の献立はいつもきまっていて、鯖缶とヨーグルト。それに、トマトジュースです。
わたしには、美食家の心理がよくわかりません。
前にいちどだけ引き出物のカタログギフトで銀座の寿司屋のお食事券を申し込み、勇んで赴いたことがあったのですが、けっきょくわたしには、電車でレーンを走ってくる炙りバジルチーズサーモンのほうが、多量の快をもたらしてくれるようでした。
焼肉なども大の苦手で、焼きながら、談笑しながら、機敏に網上の標的を見さだめて、ひとに譲ったり、すかさずかすめ取ったりする、これは脳の複数の領域を酷使する、高度に政治的な労働であって、わざわざそれなりのお金を支払ってそのような苦役への従事を志願する気にはなれません。
ドラえもんのひみつ道具で、なんというのか名前は忘れてしまいましたが、ひとつぶでお腹いっぱいになる未来食のようなものがあって、ああいうものがもし実用化されるなら、わたしは毎日それだけを摂るでしょう。
昼食後、天気がよければ散歩に行きます。
缶コーヒーをのみながら、日光をあび、さかんにセロトニンを分泌しながら一時間ほど歩きます。
天に突き立つ野草を見ていると、ふしぎに思います。
どうしてこのかたちで「しゅばっ、しゅばっ」と音がしないのか。
まるで、刑期をつとめるやさしい火焔のようです。わたしはそれをひっこ抜き、口にふくんでみることもあります。苦ければ吐きだします。
おもしろい声の鳥やめずらしいかたちの花を見かければ、ぼんやりと眺めながら「ほおー……」とおもいます。
スマートフォンはきらいなので写真は撮りません。
部屋にもどれば図鑑があるのでそれで名前をしらべよう、そうおもうこともありますが、けっきょくいちども実行したことはありません。
植物のしくみも、鳥類のからだのつくりもいまだによくわかりません。
「ほおー……」でけっこう、満足してしまうのです。
買いものをして、家に帰ると夕食をつくります。
ひとりで食べるものではないので、鯖缶ヨーグルトで終わらせることはできません。けっこう凝ったものもつくります。
お湯をわかしたり、なにかを煮込んだりしているあいだ、むぞうさに本を捲っていることもあります。
いいな、あるいは気になるな、と思うところがあれば、赤ペンでじゃーっと印をつけます。後でじっくり読んでみるためです。
いまではもうそうたくさんの本を読むことはありません。
部屋の本棚におさまっているのは、わざわざ数えたことはありませんが、せいぜい三百冊くらいでしょう。
わたしにとって、なんらかの意味で励ましとなる一節をふくんだ本ばかりです。これらをくっきり選りぬくために、やはり二十代までの濫読の時期は必要でした。
おんなじものを何度も新鮮に読み返しながら、わたしは老いていくでしょう。
手鍋がコトコトいいはじめたら、もう読書はやめてしまいます。
夕食をとり、ふろにはいります。
湯ぶねをつかうことは、基本的にはありません。すぐにのぼせてしまうので、この場所に十分以上とどまることはできません。
たまに箱根や草津などへ旅行することがあっても、大浴場へは行きません。
知らないひとに話しかけられるのがいやだからです。
くつろぎをもたらすはずの湯のなかで、愛想笑いにつかれていたら元も子もないでしょう。
わたしは部屋のシャワーですませ、長風呂の同行人がもどってくるまでのあいだ、畳のうえで瞑想しています。
夜はおそくとも二十二時までには就寝します。
ドライヤーで髪をかわかして、まだ十九時過ぎくらいであれば映画を観ることもあります。
ストーリーのはっきりしているものは苦手です。
アクション、サスペンス、ホラーなどはぜったいに観ません。
邦画だと小津安二郎をよく観ますが、『東京物語』などはあまりおもしろいとは思えません。『秋刀魚の味』が好きです。休職期間中、あれの、酔った笠智衆が軍歌を口ずさむとこばかり毎晩観ていました。
海外のものだと、ゴダールです。よくわかりませんが、「わからなくっていいや」と思えるから気が楽です。
映画館へは、たまにキャラメルポップコーンの匂いをかぎに立ち寄ります。
二十一時半ごろ、布団にはいります。できるだけ少量の水で(トイレに行きたくなってしまうので)、漢方ふた包み、錠剤二錠を嚥下します。それからもう一錠、こんどは舌のつけ根のあたりで溶かしきります。
日中うみだしたセロトニンがメラトニンへと変化して、援軍に来てくれます。そして悪夢を撃退してくれます。
とはいえ、気がかりな夢を見たら見たで、わたしにはそれを解くたのしみも保証されるわけです。
わたしの数すくない趣味のひとつは、夢解きです。
わたしのこれまでに見たもっともうつくしい光景は、夢の夜空にひろがったエメラルド色の星の嵐でした。けれども、それはどうでもいいことです。
わたしは書くのに疲れてしまいました。
これがわたしの代表的な一日です。みなさんも、ありきたりな一日をこまかく書いてみてください。